口から出まかせ日記【表】

もうすぐゴールデンウィークですね(早)

美術館で並ぶな。

秋になると急に運動だ、芸術だ、食欲だと言い出すけど、それは別に秋だけの専売特許じゃない。暑かろうが寒かろうが、運動に励み、芸術に親しみ、食欲に狂う人はたくさんいる。それどころか四季を問わず、煽り運転も、なりすまし詐欺も、痴漢もある。痴漢の秋なんて、そんな高尚ぶったジャンルは無い。たまたま痴漢したくなったのが秋だったということはある。

 

それと同様、運動したくなったり、アーティスティックなフィーリングが湧いたり、お腹が急にすいたのが、たまたま秋だったと、それだけの事だ。秋という季節自体が、平等な価値観を人間に与えるわけでもない。ただ夏と比べれば涼しくなるので、どこか出かけようかと、自然とそんなことを考えるようにはなる。

 

で、私も秋になるとつい、美術館なんてところに行きたくなり、昼飯には併設されたレストランで、ビネガーソースのかかった羊の肉を食うなど、小癪な真似をするのが大好きだ。最近になって、急に東京へ遊びに行きたくなってきたので、美術館の企画展を調べたりしている。

 

美術が好きなので美術館も好き、と言いたいところだけど、苦手な部分もある。特に混雑している時、人の流れに乗って鑑賞しなければならないのが非常につらい。作品の展示順に沿って、お行儀よく並んで鑑賞する人がほとんどだ。

 

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あれのつらいところは、自分にとってグッときた絵の前で止まれないこと。気に入った絵があれば10分でも20分でも、そこにとどまってじっくり鑑賞したい。でも、他人の無言の圧力に押されてしまい、それができない。美術を鑑賞するというのは、本来はとても個人的な体験なはず。原画と対面できるなら尚更なのに、それが難しい。

 

美術館に来る客の、妙に融通の利かない空気感はなんだろうといつも思う。お金を払っているから、全ての絵を順番に観ていかないと損だと考えているのだろうか。それは勘違いも甚だしいと思う。そう考えている人は、美術館に来るセンスが欠けているとはっきり断言したい。

 

拝観料を払い、展示スペースに来たら、そこからは貴方にとってのフリースペースだ。別に絵を順番に眺める必要なんてない。有名な絵を真っ先に眺めに行って、他は後回しでもいい。逆から鑑賞してもいい。一番最後の絵から、一番最初の絵に遡ってもいい。絵を眺める手順は本来、人それぞれに委ねられている。

 

列を作ってのろのろと進む人たちの姿は、救援物資を求めて並ぶ人の姿と重なる。確かにそうやっていれば、間違いなくすべての人に機会が平等にいきわたる。でも、それは切羽詰まった状況での知恵であり、選択肢が多い自由な場で、わざわざ踏襲しなくてもいいのでは。

 

私にとって理想の美術館は、展示スペースに入った途端、てんでバラバラに人が散らばっていく状態だ。ちょうど遊園地でチケット売り場をくぐった後に、人が全方向に向かって散っていくような感じがベストだと思う。自分の目当てのものを最初から目指すのもいいし、空いている所を目指してもいい。もちろん順番通りに並んでみるのも悪くない。

 

もっと自分の欲求に素直に従いつつ、他の人の邪魔をしないで鑑賞すればいいじゃないかと感じる。美術館はお金を払ってわざわざ列に並びに行くところではない。飾られている絵の中で、どれか一つでも自分の心に引っ掛かるものがあるなら、お金を払った価値があると考えた方がいい。