胃カメラの話を始めてから、微妙にみなさまのアクセス数とスターの数が減ってきていますが、めげないで続けていきますよ……。
逆流性食道炎の治療薬の処方には、定期的な医師の診察が必要だった。それで、二か月に一回、近所の病院に通うようになり、すっかりそこのお医者さんと顔なじみになってしまった。このお医者さん、微妙に信用ならない人物で、嘘か真かよく分からないことばかり言う。
「あなた、20代のうちにね、頑張って運動してくださいよ。30代を過ぎたら代謝がガクッと下がるんでね、落ちるものも落ちなくなりますぞ。私みたいになりたくないでしょう? ぶあはは」
「なんとなくお腹の調子悪いって時があるでしょう? ああいうときは何でもいいから風邪薬を飲むと、すぐ治るんですよ、ふへへ」
みたいなどうでもいい話を山のように仕込んでいる人であった。タケプロンの効果は一応、実感できるものだった。食道に胃酸が上がってきてチリチリ焼かれるような感覚の頻度は確かに減った。といっても、何らかのスイッチが入れば、同じ症状に悩ませられる。私の場合、コーヒーや紅茶といったカフェインを含む飲み物が確実にその引き金になるようだった。
なので、そういう飲み物は出来る限り避けるわけだが、仕事では付き合い上、どうしてもコーヒーや紅茶が出されるので、対応がめんどくさい。プライベートではカフェなどに行くことを避けることになり、なんだか楽しみが失われたような感覚になる。まあ、行ったとしても、コーヒーが美味しいと評判の店で、ひとりオレンジジュースを飲んでいる、みたいな悔しさが募った。
薬の効果は実感しつつも、根本的な症状の打破が出来ないまま、二度目の胃カメラ検診をした。逆流性食道炎の治療薬の処方には、年に一回以上の内視鏡検査が必須だからだ。胃カメラ自体も嫌だけど、胃カメラの検査を予約して、その日が近づいてくる感覚がとても嫌だった。大げさに言うと、拷問の執行日が近づいてくるような気分だ。
二度目の時は例の美人女医ではなく、中年のおじさんであった。学生の見学は無かったのでよかったが、あいかわらず喉奥に胃カメラを通すときに本能で抵抗することになり、「うぼぇ」「ぶえへぇ」「おっぶおッ」「ぐぼふぅ」と、断末魔が部屋に響いた。結局、半生半死だった。
もう絶対胃カメラはやりたくない。強くそう思った。このままじゃずっと、胃カメラを呑み続ける人生になるような気がして、暗澹たる気分だった。どうしたら正体不明の胸焼けが解消されるのだろう。かかりつけの病院で、「頂いてる薬の効果は実感してますが、些細なことで胸焼けして気分が悪くなることをずっと気にする生活は嫌です」と、正直に伝えると、
「とりあえず今は薬を飲んでおきましょう。こういった症状はある時期から体質が変わって、不思議と改善されることもあるんですよ。もう少し年を取ると、自然と胃液も減りますから、気長にやっていくのがいいですよ、おほほ」という答えで、ほんとかよ、と思ったのだけど、後々この指摘を実感することになる。
それから、口から入れる胃カメラではなく、「経鼻胃内視鏡」つまり鼻から挿入する胃カメラならラクだ、というネットでの評判を知り、今度からこれにしようと心に決めた。ただ、これを実施している医療機関がそう多くないため、遠くの医療機関でやることも考えながら調べると、なんと、今まで胃カメラでお世話になっていた大学病院で実施しているという。
なんということだ、ラクな方法があるのになんでそれを教えてくれないんだ。あの地獄みたいな苦しみはなんだったんだ。そして、私の心の中で医療関係者への憎悪がふつふつと湧き、ほうれん草のおひたしを山のように食うなどの奇行に駆り立てたのである。つづくぴょん🐇