口から出まかせ日記【表】

もうすぐゴールデンウィークですね(早)

福島と東京の距離感。

ういえば、こないだ高円寺で「不適応者の居場所」に参加したときに、私の地元である福島県のことを色々聞かれました。「東京から福島って遠いですよね」とか、「東京から福島まで新幹線でどれくらいかかるの」とか、「郡山市福島市の北にあるんだっけ」とか。

 

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思わず、「うわ…福島県の知識量無さすぎ…?」と思ってしまったけれど(失礼)。でも私が「じゃあ、あなたは静岡県沼津市焼津市、どちらが東京に近いか分かる?」聞かれたらよく分からないように、自分にとって馴染みのある地域以外は、なんとなくモザイクがかった感じで把握しているのが、誰にとっても実情であると思います。

 

それで、まあなんというか、この際はっきりさせてあげましょうかね(?)福島県の場所であるとか、福島県民にとって東京とはどんな場所なのかというものを。最初に言っておくと福島と東京はかなり近い。距離的にはそこそこ遠いですが、意識の上では、割と近所です。

 

 

 ↑みえっがい? あぞこがふぐすまげんでず(訛)

 

 ↑私が住んでいる福島市があそこです。見てもらうと分かると思いますが、福島県の北の端に位置しています。全国47都道府県の中で、面積の広さが第3位という福島県ですが、その県庁所在地が県のど真ん中とかじゃなく、ほぼ宮城県との県境にあるわけです。

 

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福島市内の山から眺めた市街地です。「あなたにとって福島市ってどんなところですか」と聞かれたら、「……別に」と答えそうな気がします。ややパワーが弱い風土であることは確かです。自然が豊かで、温泉の数も多く、果物がいっぱい採れますが、若者には受けが悪いかもしれません。定年退職後にゆっくり暮らすにはいい場所だと思います。

 

福島の名を冠しているわけで、やはり原発事故との関連性が気になる方が多いでしょう。福島市に限って言えば、すでに原発事故の記憶は風化してきています。事故の当初は市内も多少の放射能汚染を被りましたが、もう基準値も下がりましたから、だいたいの人は気にしていないかと。ただ、地元の夕方のニュースで県内各地の放射線量測定値が流れるのですが、原発周辺の放射線量の高さには、いまだに身が引き締まります。

 

★★★

 

福島市は交通の便がいい場所です。東北本線沿いなので電車もあるし、新幹線も停まる。高速バスもたくさん出ていて、福島駅から京都駅まで直通の高速バスもあります(ギャラクシー号っていうバスです)。それこそ「そうだ、京都へ行こう」と思ったらいつでも行けるわけです。

 

県外に出やすいという立地は、福島市民のマインドに少なからず影響していると思います。福島市民は「地元で暮らし、外で遊ぶ」ことに慣れているのです。地元で稼いだお金を、せっせと県外に貢いでいる、そんな印象です。

 

「外で遊ぶ」のを覚えるのは中学生くらいからでしょうか。それまで近所でチャリンコを乗り回していれば満足だった子供が、お金を使って遊ぶのを覚え始める時期です。福島の市街地で遊ぶようになり、それがだんだん飽きてくると、今度は電車や高速バスに乗り、東北随一の大都会である仙台に向かうわけです。

 

福島市ティーンエイジャーのライフスタイルはこれで決まりです。平日は地元でぼんやりと生活し、休日になるとウキウキしながら仙台へ向かう。仙台中心部の商店街を精一杯オシャレをしてどや顔で歩くのです。しかし、だんだんそれも日常的になってきて、別なスパイスを求めたくなる。

 

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そうして目指す先が、THE TOKYO CITY なわけです。東京に行くとなると気合が要ります。コンクリートジャングルで遭難しないための情報収集。洗練された都会人に怖気づかない強い精神力。そしてなによりも軍資金が必須です。それまで数千円で済んでいたのが、移動代だけで福沢諭吉に届くという現実に慄くわけです。お小遣いではまかないきれません。

 

彼らは一生懸命バイトに励みます。寝ぼけ眼をこすって働き、得たお金で東京にいきます。新幹線は使いません。金曜日の夜中に高速バスに乗り、早朝の新宿に降り立つ。そして晴れて、渋谷や原宿、表参道を闊歩するわけです。巣鴨や西日暮里なんて眼中にありません。

 

こうして、10代の青春時代を仙台と東京に費やした人間の心の中に、今後の一生を付いて回る意識が育ちます。「福島は仙台と東京、二つの大きなパワーに挟まれている」という感覚です。意識を仙台と東京に注いだ結果として、生活の場と娯楽の場が分離するのです。そして地元への関心が育たないまま、華やかな二つの都市への関心が肥大する。

 

結果どうなるかというと、仙福京が生まれるのです。つまり、仙台+福島+東京=仙福京です。この仙福京にいつのまにか住んでいる。だから福島の人間にとって仙台とか東京というのは隣町です。ごくごく近所です。

 

地形学的な把握ではなく、意識上のユートピアです。福島という地味な住処の両端に、魅力的な都市があり、働いて遊んで、働いて遊んでを繰り返す。そんな生活パターンがこのユートピアを生み出すのです。そしていつの間にか、東京と仙台以外の地域の関心すら失っていく。

 

まとめると、福島から東京は距離的に離れていますが、福島の人間からすれば隣町です。逆に東京出身の方からすると、福島は遠い場所という認識なのでしょう。距離なんてのは人間の意識によっていかようにでも歪められるものなのですよ(;´Д`)