花より団子とか言いますが、お団子を食べてる人をまず見かけません。会社のお昼休みに、花見客をじっと観察してるんですが、そのように風流な人はこのあたりには皆無のようです。じゃ、何を食ってるのかというと、じゃがりこサラダ味なんかをカップルでシェアして食べてたりします。あと、カップ大関なんかをチビチビやりつつ、ジャンパーのポケットからなんかよく分かんない紐みたいな乾物をつまみだして食ってるおっさんは見かけます。
ちょっと小洒落た感じのお姉さんたちは、パンの真ん中を切った裂け目に食べられる草を敷いて、さらになんかこう、ちょっと生っぽい感じの肉を載せて、合間にアボカドを投げやりに詰め込んだやつをむしゃむしゃ食べてたりします。めっちゃうまそうです。「なんや姉ちゃんら、うまそうなもの食うとるのぉ。そないなうまそうなものどこで買うたんや。ちょっと教えてけろ」と聞きたい欲求を噛み殺しながら生きている。
私の方は何を食べてるかというと、節約のため、ここんところカロリーメイトが基本食です。それだけじゃ気持ちが寂しい時は、近くのパン屋で一個だけパンを買ったりします。カロリーメイトが主食、パンがおかずです。それを近くの公園で死んだ魚のような目をして貪っています。
会社の近くにはパンを買えるところが多いです。コンビニもありますが、なるべくだったらパン屋さんで買いたいなと思うのが人情でしょう。このあたりでは、半世紀くらいやってる老舗のパン屋もあるし、ヨーロッパの屋台をモデルにしたようなオシャレパン屋や、メロンパンだけを売っているコンセプトショップっぽいパン屋もあります。パン選びに関してはかなり恵まれていて、日ごとにパン巡りができるのは楽しいのですが、だんだん根本のところで飽きてきてしまいました。
なにに飽きたか。結局、どのパンもやたら柔らかいやつばっかりなのですよ。フワフワだったり、サクサクだったり、モチモチだったり。食感は色々ありますが、どれも食べるのにストレスが無いものばかり。いや、それが悪いわけじゃあないんです。私だって、このパン、モチモチして美味いなとか思ってたんですが、どうもこう、店頭に並んでるパンが、どれもこれもフワフワ感を打ち出しているのばかりだと、もう少し噛みしめ甲斐のあるパンが食いたくなってくるのもまた人情じゃないでしょうか。
で、フランスやドイツあたりのパン屋さんの画像なんかを本やネットで眺めると、まるで石か岩みたいなパンが並んでたりしますが、そういうのをみると無性に旨そうに見えてきました。いかにも嚙み切るのに難儀しそうだし、味も素材を生かした味、悪い言い方をすれば素っ気ない地味な風味だと思うんですが、何故だかそういうパンにかぶりつきたい欲望がこのところ高まってきている。
たぶんですが、自分のストレスを、噛み応えのある食材を噛みしめることで解消したいんだと思います。昔はそれを量で解消してました。大盛りや特盛に挑んで完食する。それは個人的に、気軽な勝利感が得られる行為だったんです。でも、すっかり食べ盛りが終わった現在、特盛なんて頼んだら確実に負ける。じゃあ、今の自分はなんだったら勝負できるのか。まあ、咀嚼力ならまだイケるぜ、虫歯もないし。ということで本能が硬いパンを求めてるんじゃないでしょうかね（笑）
それは冗談半分として、なにも載せたり挟んだりしてないプレーンなフランスパンなんかを、公園のベンチに座って、ちょっとずつ千切って無心でもぐもぐ食べたりするのは、なんか良さそうだなぁ、やってみたいなぁと思ってます。一度、自分が今まで依存してきた食事への期待値をリセットしたいのかもしれないですね。禅的というか、自分なりの精進料理のようなものとして、プレーンで硬いパンを求め始めているのかもしれないです。
このサムネの如くミシミシ音がするようなパンが食いたいのじゃ。
