口から出まかせ日記【表】

もうすぐゴールデンウィークですね(早)

我いかにしてカブ主となりしか【前編】

 

様はスーパーカブに乗ったことはございますでしょうか。新聞配達の人がよく乗ってる例のアレ。ガチャ、ガチャン、ブロロローと、早朝の空気に溶け込むような、妙に安心できる駆動音を醸し出す原付バイクのことです。ここんところ、はてなブログでなんとなくスーパーカブの話題が増えている気がするのは、もちろん例のアニメの影響でしょう。

 

supercub-anime.com

これです。たくさんブクマされてます。私の会社でもちょっぴり話題になりまして、ついでに本屋で原作の漫画はすでに立ち読みしてきました。うーむ。アニメはとりあえず様子見かなぁ笑。で、今回は「スーパーカブ」の波に便乗する形で、私がいかにしてカブ主(スーパーカブ所有者の通称です)となったのか、おぼろげな記憶を元に、つらつらと書き記そうと思った次第でございます。


スーパーカブを始めて意識したのは小学生の頃ですか。よく行く床屋さんの隣が新聞屋さんでして、もちろんカブが店先にいっぱい並んでおりました。当時の感覚としては、カブってバイクは近所のやんちゃな兄ちゃんが乗り回してるのとは違い、真面目で落ち着いた印象があったんですね。公務用の乗り物という感じ。そんなバイクに乗れる人というのは、ある種の特権というか、何らかの審査を経て乗れるような気がしてたんですが、祖父に聞いたところ、「あれはなんにもいらないよ~。誰でも乗れるよ~。免許と一緒についてくるようなもんだからよ~」みたいなことを言われて、免許を取ればバイクがタダで付いてくるのかぁ、へぇ~とか思ってたと思います(馬鹿)。


次にスーパーカブを意識したのは、あの有名な番組を知ってから。そうです。「水曜どうでしょう」という北海道テレビの番組で、大泉洋と鈴井貴之のタッグが、サイコロを転がして深夜バスに乗ったり、四国八十八か所を巡るなどする珍妙な番組です。その番組内の企画で、銀座のバイク屋さんで買ったスーパーカブを北海道テレビの本社まで「乗って持ち帰る」というのがあり、ちんたらと走る二台のスーパーカブをひたすらカメラが流し撮りするという、映像作品史上における地殻変動を起こすことになりました。

 

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私はそれを本放送からずいぶん時間が経ってから、深夜の再放送で観ました。ちょうど高校生の時です。もちろん免許を取れば原付がタダで貰えるなんて謎理論からは卒業し、自動車免許を取れば原付の実技試験が免除になるくらいは知ってました。その頃から自分の周りで原付バイクの免許を取る連中がちらほら現れ始め、当然、原付登校をしようとする奴らも出ています。


が、我が母校は校則が厳しく、駐輪場の前には、禁止されている原付登校を見張る屈強な柔道の顧問が立っているのでした。なので、どうしても原付で来たい連中は、学校からちょっと離れた場所に置いて、何事もなかったように校門をくぐっていたのです。中には、原付登校が認められている別の学校の駐輪場に堂々とバイクを置く、大胆不敵な奴もいましたが、そんな中、私は錆びた自転車をギーコギコ走らせながら、片道10キロ近くの道のりを満面の笑顔で登校しておりました。


ある日、下校する方角が途中まで同じなのだけど、大して仲が良くもないし、ろくに話をしたこともない同級生が、どうやらこっそり原付登校を始めたらしいと風の噂で聞きました。で、学校の帰り、そいつに「おい君の原付見せてたもう」と頼むと、「吽」と応え、原付を停めてある場所まで案内してくれました。なんか、恐ろしいほど朽ちた廃屋の裏手の、陶器の破片なんかがところどころ地面に埋まっている妙に陰気な空き地でした。

で、その原付を見て言葉を失いました。いま思い出すと郵政カブ、つまり、昔は郵便局でよく使われていた赤と白のスーパーカブだったなと思うんですが、全体的にすさまじく錆びついており、キャリア(後ろの荷台)には、用途不明の荒縄が巻き付けてあるのです。で、ウィンドシールドという、風よけ用のポリカーボネート板が付けられているのですが、なんかそこに、虫の蛹が干からびたようなのがたくさんくっ付いており、風に揺れていました。


私はその同級生にかける言葉が見当たらず、あっけにとられたまま立ち尽くしていましたが、ようやく、「こ、こ、こ、このバイクは、き、き、キミの趣味なのかい?」みたいなことを聞いた気がします。すると相手はまったく憤慨したみたいな表情を浮かべ、「そんなわけないだろうが、ハゲ」とか言われました。ハゲてないのに。それから同級生は何事もなかったようにバイクに跨り、なんかやたら不器用な感じのエンジン音がしたと思ったら、虫の蛹を揺らして走り去っていきました。その同級生とは、その後まったく関りが無く、今どこで何をしてるのかさっぱり分かりません。中編へつづく。

 

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