口から出まかせ日記【表】

もうすぐゴールデンウィークですね(早)

古さの解釈。

 

月に入ってから何度か、福島市内にある飯坂(いいざか)温泉に行く用事がありました。用が済んだあとは、ついでに温泉街をブラブラと散策したり。なかなかいい気分でしたね。


温泉街には共同浴場がいくつかあります。中でも有名なのは、上の画像にある「鯖湖(さばこ)湯」。しかしこの鯖湖湯、湯加減がかなりホットでございます。軽く45℃くらいあるんすよ。ちょっとこれじゃ熱くて入れないから、蛇口をひねって水を入れようとすると、近所から浸かりに来ているお爺さんにガチで怖い顔をされてしまったりします。なかなか初心者には厳しい界隈です。


飯坂あたりに住む人は、熱湯に慣れきっている異能者ばかり。42度のお湯に入る感覚で46度の風呂に肩まで易々と浸かるのです。同じ人間なのに何故こうも違うのか。その不可思議を身をもって体験するには最高のスポットかと。私は熱すぎるのは苦手なので、ここに来ても風呂には浸からず、足湯だけで満足して帰るヘタレでございます。足からず(悪しからず)。


…………まぁそれはいいとして、改めて飯坂を歩いてみると、「けっこうギリギリのバランスで成り立っているよなぁ」と感じました。街中に急に立派な旅館の廃墟が堂々とあったりしてびっくりします。なんていうか、温泉街の中が「栄枯盛衰のパッチワーク」になっている感じ。勢いがあったころに建てられた旅館の廃墟が遺跡のようにそびえ立つなか、鯖湖湯をはじめとした昔ながらの施設は、今も変わらず静かに繁盛しているのです。


新しいものほど生き残らず、古いものほど生き残る。そんな逆転現象で風景が成り立っている。かつての風物詩であった、街の中心を流れる川に沿って営業していた旅館もけっこう廃業しており、ある所はそのまま放置されて廃墟化、ある所は建物をそのまま利用する形で介護施設になってたりします。となると、どうしても景観がちぐはぐになったりしますね。まだまだ綺麗な施設が、荒廃が進む廃墟と廃墟の合間に挟まれていたりして、神妙な気分になってくる。

 

 

飯坂温泉はかなりPR活動に力を入れている印象があり、そこらへんに「温泉むすめ」の看板もあったりして、感覚的なアップデートというのか、温泉自体をキャラクターとして楽しんでもらうような心意気は感じられます。

onsen-musume.jp


ただ、過疎化しつつある光景の中にアニメ絵の看板が立てられているのを見ると、「目に映る風景を、それぞれの主観で勝手に補完してもらおう」という運営側の狙いも意識させられます。私自身はちょっと廃墟マニア的な嗜好もあったりするので、実をいうと、飯坂にある廃墟群は眺めてて満更でもないんですね。ちゃんと営業している立派な旅館にしても、「あれが廃墟になったらきっと凄えだろうな」なんて失礼なことを考えていたりするんですよ笑。


まぁ私みたいな奴は、かえって過疎が進めば進むほどに集まってくる。でもそうなったら、温泉街の寿命としてはほぼほぼ終焉なわけです。廃墟マニアの希望を叶えすぎてはいけない。かといって、古いものを排除して真新しいものに作りかえても、過疎化の抜本的な解消にはならないでしょう。単に古いから過疎化が進むのではないからです。寧ろ、古さこそが人を魅了して集めるわけですし。


ただ、どの程度までの古さであれば人から受け入れられるのか。古さによる魅力が、古さによる不便とか不快感に勝る線とはどの程度なのか。そのあたりを見極めて、残すものと残さないものを決めていく必要があるんでしょうが、きっと難しい。人によってかなり幅がある価値観でしょうし。死んだ私の祖父なんか、良かれと思って歴史ある純和風の温泉宿に泊めてあげたら、「こんな襤褸い旅館に泊まらされるんかい」とか文句しか言わなかった笑。


お、ちょっと長くなったのでそろそろまとめると、もし福島に来られる機会があれば是非、飯坂温泉に行ってみてください。今の飯坂ってかなり絶妙です。立派な温泉ホテルが立ち並んでる一角もあれば、歴史ある共同浴場の鄙びた雰囲気も味わえるし、廃墟マニアを狂喜させる光景すらある。それぞれの趣味嗜好に合う場所が散在しているのです。そういう意味じゃ、今が飯坂温泉の黄金時代かもしれないぞ♨

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熱い風呂に入る時はどうぞこの曲を脳内で流してください。