ここ数年はすっかり、ほうじ茶を啜りつつ季節の移ろいを眺めながら静かに悦に入るような、落ち着きのある性格になってきた。自分でもこの変貌に驚いている。10年くらい前は公園で酒を飲んで大音量で音楽を鳴らして踊り狂っていた夜もあった。いま思うと、遠い別人がやったことのような気がしてくる。
それでも時々、かつての自分が心の奥底から這い出てくることがあり、そんなときは外に出て人目をはばからず踊りたくなる。でも、分別あるもう一人の自分がそれを押しとどめる。それで結局、「YouTubeを流しながら自室で踊る」という折衷案に至る。
それで今回は、つい踊りたくなったときによくリピートしている曲を厳選して選んでみた。踊りたくなった人はどうぞ踊ってください。ただし、足の小指をタンスにぶつけたりだとか、家族から狂人と思われたりなど、物理的・心理的影響による責任は個人にあり、私は関係ありません。ご自分で何とかしてください。
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・Cristal Castles-Kept
↑「クリスタルキャッスルズ」というカナダ出身のグループ。しかし凄い再生回数だ。夜な夜などれだけの人がこの曲で踊り狂っているのだろう。ヴォーカルが解体されて散りばめられているが、音楽としての骨格はしっかりとしている。テンションの緩急の付け方が鮮やか。リバーブ(残響効果)のどこか切ないような感じもいい。踊れます。
・The xx -Islands
The xx - Islands (Official Video)
↑「ザ・エックスエックス」というバンド。「ザ・ダブルエックス」という呼び方でも良いと言われていたりするが、そこははっきりしてほしい。映像ではさっそく踊っている人がたくさんいる。こういう、リズムが素朴な曲調は好き。踊れます。
・Blood Orange-You're Not Good Enough
Blood Orange — Youre Not Good Enough Official Music Video
↑いきなり手前で踊りだした女性たちの奥の方で歌っていたと思ったら、急に前に来て踊りだしたりと忙しそうにしているのが、ロンドン出身のデイ・ハウンズさん。色々な名義で活動しており、「ブラッドオレンジ」もその一つ。天才的な人で、歌えるし踊れるしギターも弾ける。マイケルジャクソンとプリンスを混ぜたような印象。このMVの微妙に気の抜けたオシャレな雰囲気が好きで、ついリピートしてしまう。踊れます。
・HeilungーHamrer Hippyer
Heilung | LIFA - Hamrer Hippyer LIVE
↑Heilungというバンド。8世紀ごろの、バイキング時代の中世ヨーロッパからタイムスリップしてきた人たちだと言われている。見た目が見るからにヤバい。普段は人間を煮たり焼いたりして食べているんだと思う。すごい呪術的なフィーリングを感じる。踊れますが、ちゃんとこっちに帰ってきてください。
・Trisomie21-The Last Song
↑「トリソミー21」という1980年代にフランスで結成された兄弟二人組のバンド。 映像は1986年頃のディスコの光景。ディスコっていい響きですよね。今はクラブなんて、味もそっけもない言い方。母親によると、ディスコの前は「ダンパ」(ダンスパーティーの略)といっていたらしい。昭和は遠くなりにけり。踊るしかない。
・1989 lllegal Rave,Acid House
1989 Illegal Rave, Acid House лучшие обрезки
↑こういう映像を見るたび、自分は生まれるのがちょっと遅かったような気がしてくる。ちょうど平成の入り口あたりの時期は、ヨーロッパの音楽に変革が起きていて「セカンドサマーオブラブ」とも呼ばれた華やかな時代だった。日本でもこの後すぐ、電気グルーヴなんかが台頭してくる。こうして追体験できるというのは良い時代だというしかないけれど、YouTubeってそんなノスタルジーの集積場になってきた感じがする。
↑日本の誇る踊れる音楽といえば「音頭」に決まっている。そしてその音頭からさらに厳選すれば「クックロビン音頭」になるのはもう逃れようのない事実である。私たちはみな音頭を踊って育ってきた。音頭のリズムがDNAに刻み込まれている。 古今東西のどんな音楽に酔いしれようが、結局は音頭に戻ってくるのだ。さぁ踊りましょうか。