相変わらず暑いのですが、その暑さの中に、だんだんと空虚さが占めてきている今日このごろ。ミンミンゼミは死に絶えて、ツクツクボウシばかり鳴いている。そこらへんで早くもススキなんか生えてきて、風景がちらほらと秋っぽくなってきてます。夜も蒸し暑いけど、外から聞こえてくる虫の音は、秋だ。
ところで今週のお題は「これって私の地元だけですか」ってことですが、こないだ会社に県外からお客さんが来られて、コーヒーを飲みながらバカみたいな話をしました。そのあと、それぞれ飲み終わったカップを流し台まで運んでもらい、ちょうどハイターで水切りとかも消毒してたんで、「それ、軽く洗ってもらって、水切りの中に潤かしといてください」と頼んだら、お客さんが「ほえ?」っと意味不明な声を出したので、私も「ぶべ?」と意味不明な声で返しました。
一部地域でしか流通していない方言を、標準語と疑わずに使ったら伝わらないというシチュエーションと、未だに出会います。「潤かす(うるかす)」という方言があるんですが、これは「水に浸す」という意味で、「その茶碗、そのまま置いてないで潤かしといて!!」とか、そんな感じで使います。福島県あたりじゃかなり使用頻度の高い方言で、私は方言だという感覚すらありません。ガチな福島弁を話す人に出会うことは滅多になくなりましたが、「潤かす」は、すっかり日常用語として溶け込んでいますね。
あまりにも溶け込みすぎて、「潤かす」が方言だとも知らずにぬくぬく育ったために、地元を離れて生活を始めて、「潤かす」が通じなかったときの衝撃は忘れられません。学生の頃、友人のアパートに上がりこんで冷蔵庫の食材を勝手に使い、チューハイなんかも勝手に飲むクズ野郎だった私ですが、あるとき焼きそばをフライパンで作って3人で食い酒も飲み、空のフライパンの底に焦げた具とかがこびり付いていたので、「これ、潤かしといてちょうだい」と、ササキシュンタロウ君に頼んだわけです。
しかし、ササキ君が動かない。「うる、か……?」とフリーズしてしまいました。その時もうひとり、トシヤって奴がいて、「え、フライパン売っちゃうって、この人なに言っちゃってんすか」とかいうので、私からすればお前こそなに言ってんだって話で、あまりにもコミュニケーションが通じません。ので、とりあえず私は一度屁をこいてから二人に改めて話を聞いたところ、「潤かすなんて言葉は初めて聞いた」ということで、方言だと判明し驚愕したのです。
その逆パターンもあります。バイト帰りの友人に会ったら、「マジで今日はがおったね」とかいうので、(がおった……? バイト先で吠えたのか)と理解して、あまり詮索しないようにしてたのですが、そのうち「がおる」=「疲れる」の意味だと理解し、いつの間にか私も「マジでがおった」とか言うようになったのですが、その土地を離れると共にまったく使わなくなりました。いま日常的に使っている「潤かす」も、ひょんなことから使う機会が消滅するかもしれません。
周囲で訛っている人をほぼほぼ見かけませんが、ごくたまーに猛烈に訛っている人と話すと、ところどころ聞き取れる外国語を話す人と会ってる感覚になる。