私はなるべく外食のときも、「いただきます」と「ごちそうさま」を言いたい人間です。とはいえ、目の前に料理が運ばれきて、手を合わせて勢いよく「いただきます!!」とかいうのはだいぶ気恥ずかしいので、「じゃ、いただきますか……」なんて、独り言のようにしみじみと呟きながら箸をつけていきます。
「ごちそうさま」の方は楽勝ですね。レジでお金を払ったついでに「ごちそうさました〜」とかいいながら出ていけばいいわけで。あと、最初に食券とか買う店だと、食べ終わったらちょっと水なんか飲んで落ち着いて、自分が座るカウンターのそばに店員さんが近づいたタイミングで腰をあげ、「ごちそうさま」と言って店を出る、みたいな微調整をします笑。
世間ではこういうのを無用な行為と捉える人もいるようですが、別にこれ、店に感謝してるとかいうより、私自身が気持ちよく食事をするためのルーティンのようなものですね。食事の前後には「見えない扉」があり、まずそれを開けてから食事をして、食べ終わったら扉を開けて出ていく、みたいな感覚がある。扉の開け閉めの前の合言葉として、「いただきます」と「ごちそうさま」がついて回る、みたいな感じですか。
出てきた料理を前にして、黙ってそれに箸をつけるのが、どうにもしっくりきません。なにかに土足で踏み込んでいるような、無粋な感じがして不安が強いのです。別に親から「食事の前は必ずいただきますを言え」とか厳しく躾けられたわけでもないですが。なんていうのか、職場とかで扉を開ける時に「失礼しまーす」とか、ひとこといってから入るじゃないですか。それと「いただきます」は、私にとって同じ世界線に位置する言葉だと思うのです。
ドアをノックして部屋に入る時の「失礼します」も、エチケットとしてそうするというより、ドアを開けた先で、「ドアを開ける前とは違う自分を演出する」ことを想定し、あえて「失礼します」と言葉を発して、自分のモードを切り替えるために作用させる言葉だという感覚があります。同様に「いただきます」も、食事を前にしてモードが切り替わることを意識し、その直前に自分自身にかける「暗示」として、私には欠かせないものかもしれませんね。
ちなみに、「いただきます」なんて日本でしか言わないよとか聞きますけど、ちょっと調べると、実際は欧米諸国でも食事前に「レッツイート」とか言うそうですね。「んじゃあ、みなさん食べましょか」ぐらいの感覚ですかね。そういや昔、職場のみんなで焼肉に行ったときに、「じゃ、そろそろ焼きましょか」と上司が言った時には、すでにみんなハラミとかガンガン焼いて食ってて、上司だけ時が遅く進んでんのかと思ったことがある。
イギリスのバンド、レッツ・イート・グランマ。『サイバーパンク:エッジランナーズ』のテーマ曲で一気に出世した感あり。