口から出まかせ日記【表】

GWで浪費すると母の日にツケが回る。

無職の夏休み①

「ありったけのカネをかき集め~、うまいもんを探しに行くのぉさぁ~」とかなんとか適当なことを歌いつつ、国道45号線をバイクでひたすら北上。途中、石巻で寄った『上品の里』という道の駅にて、ヒッチハイクのみで日本国内を何年も回っているというひげ面の男性と出会います。彼は「吉川」と名乗りました。

 

「旅をしてる人に声かけて、その内容を本にしてる。住所を教えてくれたら、後で送るよ」とのこと。怪しいのでちょっと殴ろうかと思ったのですが、彼の身の上話を聞くうちに、騙されてみるのも面白いと思い、本の代金分の1000円を支払いました。すると、道の駅の売店で売っていたイカフライやシュークリームをご馳走してくれました。まあ、彼は私のお金で支払ったわけですが(そもそも彼は無一文らしい)。九州に帰る予定だそうですが、大丈夫だろうか。万が一、本が届いたときはご報告します。

 

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それからさらに北上。雄大北上川のそばを走り抜け(撮ったはずの画像が消失)、気仙沼を抜けて、陸前高田から大船渡に移動。大船渡の峠から青々とした海を眺めた時は感動しました。大船渡の市街を抜けて、107号線をまっすぐ進むと、海辺の風景が一変し、山間の風情が漂ってきます。まだ16時前だというのに、山裾に太陽が隠れてあたりはすでに薄暗く、不安になってきました。

 

今回の旅の定宿先である、ギークハウス大船渡の前に立った時の感想を一言で表現すれば、世界のどん詰まりだと思いました。玄関にはカギはかけられておらず、「ごめんください」といっても、誰もいません。屋根の庇は蜘蛛の巣だらけです。庭は荒れています。なにかが放棄されて無人になったばかりという感じでした。

 

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玄関先に人に馴れた犬(名前は空と書いて「そら」という)がおり、それだけが心の救いでした。ギークハウスの管理者に連絡すると、しばらくして「勝手に入っちゃっててください。他の人たちはそのうち帰ってきます」ということでした。家の中に一歩入ると、雑然と散らかった三和土、雑然と散らかった寝室、雑然と散らかった台所。涙が出そうなほど懐かしいプリミティブな要素で溢れているのです。

 

そのうち、ギークハウスの住民の方も次々帰ってこられました。私から見たギークハウスの第一印象を正直に伝えると、「外部から来た人の印象って大事ですよね。そっか、この家、おかしいのかぁ~」と、目から鱗的な反応をされていました。

 

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その夜はどこかへ食べに行く気力もなく、近所の、といっても数キロほど離れているコンビニの弁当で済ませました。そういえば、コンビニの弁当を食べたことが久しぶりです。さびしい美味しさでした。悪気はありません。

 

部屋のひとつを整理してもらい、そこで持参した寝袋を広げます。ギークハウス大船渡に冷房は無く、昼間のじっとりした熱気が部屋の中に残っています。小さな虫が天井を舞っている。貨物列車の単調な走行音が、網戸の向こうの暗闇から響いてくる。急激に、自分が何故こんなところにいるのかも分からなくなってくる。ピィーと、外から甲高い笛のような音。鹿の鳴き声です。夜中の11時頃、窓から謎の冷気が入ってきて体が冷えました。寝袋に包まりながら、この先ここでやっていけるのか、不安に包まれながら気を失いました。(つづく)