口から出まかせ日記【表】

GWで浪費すると母の日にツケが回る。

盆地トークは盛りあがる。

地に在住して20数年になります。盆地の特徴として、街の中心部から360°全方角を眺めると分かることですが、山に囲まれています。視界の向こうには必ず山が見えるわけです。人間はちょうど、クレーターみたいな窪地に街をつくって住んでいることが理解できます。この窪地、真夏は蒸し暑く、真冬はじめじめした寒さがつのり、今の時期は周囲の杉山から飛散した花粉が渦巻いています。

 

私の弟が学業の関係で関東圏に住んでいたことがあり、何度か遊びに行ったことがあるんですが、驚きましたよ。山が無くて。街の中から遠くを眺めても山裾が見当たらないんですね。土地が真っ平なのが分かって、「関東平野スゲー」と思いました。土地に大きな高低差もないので、弟の自転車を借りて、けっこう遠くまで遊びに行けました。

 

それに比べると、盆地というのは住んでいる場所によって、高低差の仕打ちを受けるわけです。前にも書いたのですが、私の家は盆地の端にある標高の高い場所にあります。だから、自転車で街に降りる時はスイスイ行けて楽だけど、帰りは地獄が待っている。それが嫌で、「将来的には平地に住みたいなぁ」と思ってたんですが、去年の台風で日本中が水浸しになったのを見て、ちょっと考え直す気になりました。

 

あと、これは「盆地あるある」かもしれませんが、盆地に住んでいる人間が集まると、盆地の悪口が始まるような気がします。「盆地トーク」ですね。特に初対面の人たちで、かつ、他の土地から来た人が混ざっている場合、自己紹介を兼ねつつ、それぞれ自分の土地の悪口を言いながら、話の輪を広げていくようなパターンをよく経験しました。

 

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そして、初対面同士でも、その人が住んでいる土地が「盆地」だと分かったとたんに、「あなたも盆地なのね~!!」と、急激に距離感が縮まり、一気にその場が盛り上がるというシチュエーションに遭遇したことが何度もあります。

 

盆地の悪口は尽きません。夏は暑く、冬寒い。盆地の民からすれば当たり前の認識から始まり、「うちの周りは晴れてたのに、街に降りたら豪雨で嫌」「雨が降ると玄関先にでっかい水たまりができて嫌」「冬はうちの周りだけ氷が張って危なくて嫌」「結婚して盆地に来てから花粉症がひどくなって嫌」「盆地は気分的に閉塞感があってもう嫌、死にたい」などなど。「盆地と関係なくね?」と思うようなことも、ぜんぶ盆地が悪いことにされるのです。

 

盆地は吹き溜まりであり、空気や湿度、水の流れなど、色々なものが周囲から降りてきます。同じように、人間の感情や愚痴も、盆地は集まりやすく、抜けていくのに時間がかかるのかもしれない。そう思うのは、私も含めた盆地の人間は湿った話題で盛り上がるのに対し、そこに盆地ではない土地の人がいると、話題に入りにくそうにしていたりするからです。いや、単に私たちと話題が合わなかっただけかもしれませんが。

 

と、ここまで書いて、どうもこの、他人に対する私の認識の仕方も湿ってるよなぁという気がします。話が合う人の事は案外コロッと記憶から忘れたりするくせに、自分と話が合わなかった人ほど、妙に後を引いて、いつまでも記憶に残っていたりする。心も盆地になっているんでしょうか。生まれた土地によって、心や記憶の受け皿の形も変わるのかもしれません。