冷やし中華はじめましたって書いてある幟とかがその辺のラーメン屋でも設置された今日のこの頃。いざ席に座って、「今日暑いですからもし良かったら冷やし中華はじめたんでどうぞ」なんて店員さんに勧められても、「あはい、じゃ味噌チャーシューメン」とまるで期待に沿わないのが私という人間でして、熱々のラーメンを食べてるうちに汗で顔がずぶ濡れになり、やっぱ冷やし中華が良かったなどと後悔するのはどこか人生を暗示しているような。
そりゃどうでもいいんですけど、老舗の食堂にお昼ご飯を食べにいくと、来た客の八割ぐらいが同じものを頼んでたりします。いわゆる名物的なメニューがあって、席に着く前から「いつもの3人前ね」なんて店員に告げている客もいる。皆さん給食でも食べにきてるんですかみたいな、入って注文して食べて出るまで隙がないほどにルーチン化されている感じ。
そんな店で逆に名物でもないものを頼むと、反響を引き起こすことがあるんですよ笑。ほとんどの客が同じものを頼む中で異質なものを頼んだりすると、厨房の向こうから、「三番席の方、ハイパーデラックスちくわ定食」「え〜、珍しいな。ちょっと待って。全然用意できてない」なんてやりとりがうっすら聞こえてきたりして。逆に店側のリズムを狂わせてしまってこっちが申し訳ない気分になったりする。
あと観光地にあるような店で、特定のメニューだけが全国的に注目されて、客がほぼほぼそれしか頼まないような感じだと、他のものを頼むときに勇気がいりませんか。地元にちょうどそんな店があり、あるメニューだけがここ15年くらいで有名になったのですが、それ以前から店を知っている身としては、その有名になったのよりも、他のものの方が実は美味かったりして、かつてはそれを食べるために通っていたこともあるのです。
ところがすっかりその店は「〇〇の店」と認識されてしまい、店に入ると店員さんもすぐ、「〇〇一人前にいたしますか」なんて決まりきったことをいうようになってしまった。そこであえて「いや、塩タンメンにします」なんて言うと、怪訝な表情をされたり、カウンターの隣にいる客から、「え、〇〇頼まないんだ〜」なんてつぶやかれてしまったりすることもありました。
ただ、その出てきたその塩タンメンは、かつての美味しさそのままなのです。そういうときは優越感を噛み締めますね笑。自分の中に息づいている店との長い付き合いを改めて感じられるし、その店がある色に染まってしまったあとも、それ以前の店の味がちゃんと残っていることは救いになる。それに客といっても一色ではなく、いろんな色の客がいるものだと店側に認識してもらうためにも、名物をスルーしてあえてビミョーなやつを頼んだりしていく勇気を欠かさないようにしたいと思います。
みっそっらーめーん🍜