口から出まかせ日記【表】

GWで浪費すると母の日にツケが回る。

プロとアマチュアは何が違うのか。

 最近、読書がはかどる。そこはやっぱり読書の秋なのか。読書の秋なんてのは、普段読書なんてロクにしてない奴が言うことで、秋の雰囲気でちょっと内向的になったから本でも読もうかなんていうミーハーな感覚だと思っていたけれど、そんな自分こそ秋の雰囲気にちょっと内向的になって本でも読もうかなんて思うミーハーな野郎であった。ごめんなさい。

 

今回も紹介したい本がある。画家の横尾忠則さん、芥川賞作家の保坂和志さんと磯崎憲一郎さんという、豪華なのかそうでもないのか分からない三人による鼎談集である、『アトリエ会議』。面白い本だった。

 

アトリエ会議

アトリエ会議

 

 

 内容は基本的にまったりとしていて、ご近所さん同士の交流といった感じ。病気の話ばっかりしている(笑)。時々、三人の職業観について語られることがあり、その部分だけは貫徹した心意気を感じられて背筋が伸びるのだけど、すぐまた病気の話に戻ってしまう。

 

 その職業観の話で面白かったのが、保坂和志さんがカルチャーセンターで講座を開いていた話だ。小説なのかエッセイなのか分からないが、とにかく文章を教える指導をしていたらしい。締め切り日や原稿の枚数制限もきっちりとある、真面目な講座だったようだ。

 

しかし、受講生の中で、そういったルールを無視しようとする人間が続出した。締め切り日が過ぎても、「せっかく書いたんだから通せ」という人や、文章を添削するよう指導しても、「なんでここを削られなきゃならないんだ」と聞く耳を持たない人がいたらしい。

 

保坂さんによれば、そういう態度がまさにアマチュアだという。アマチュアは自作を大事にし過ぎるのだ。プロならば、編集者の容赦ない添削指導や、何百枚も書いた原稿がすべて没になるとしてもそれを受け入れるものだと、保坂さんは仰っている。こういったプロの感覚とは、どこから湧いて来るのだろう。本の内容では、そこまで踏み込んだ内容じゃないので、こちらで考察してみる。

 

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まず、プロとアマチュアでは、一番大事にしているものが違うようだ。結局、アマチュアが一番大事にしているのが自分の成果物である。もっと正確にいうと、成果物に込められた、自分の苦労や見栄、「もう二度と同じものは作れないかもしれない」という自分の経験を自負する感情を、何より大事にする。

 

対して、プロが一番大事にしているのは自分自身の能力だ。プロの小説家なら、「毎日でも小説を書き進められる能力」があることが、一番大事なこと。もちろん書き上げた小説自体も大事だが、「小説を書く能力」に十分自覚的ならば、成果物は二番目になる。もちろん結果を出してこそプロだけど、まずは恒常的に技術を発揮できる能力が備わっていることがプロの素質となる。

 

素質が無い場合、足りない実力でどうにか形にした成果物にこだわる感情が出てきてしまい、そこに依存してしまう。そうなると、向上の機会を自分で失うことにつながる。他の人のアドバイスを聞けばもっと向上できるかもしれないのに、自分だけで大事に抱え込んでしまい、離そうとしなくなるわけだ。プロなら成果物は手放さないといけない。

 

マチュアの感覚を捨てて、プロを目指すのなら、やはり、基礎的な技術を入念に磨くしかないのだろう。画家になりたいならとにかく絵を描く。小説家になりたいなら毎日文章を書く。プログラマーになりたければコードを書く。そういった過程でいろいろな成果物も出来るたびに、励まされるのだろうと思う。

 

マチュアならそれでいいが、プロになったら、それは二の次になる。だから、好きなだけ鍛錬ができる時間があるときに、自分の成果物をいくつも作り、それに慣れ親しんでおくことが大事なのかもしれない。偶然できたものが話題を呼んで、なし崩し的にプロになってしまった人が、その後、いつの間にか消えてしまったりする原因は、このあたりにあるのかも。