今週のお題「○○の秋」
……というけれど、別になんでもいいのである。その人にとって秋という季節の節目が、彩りのあるものになればそれでいい。温泉の秋。登山の秋。不倫の秋。痴漢の秋。人の数だけ秋の色があるとしか言いようがない。
ところで私も「秋だなぁ」と最近つくづく感じるようになった。もしかしたら、地元にいる時間も、もうそれほど長くないかもしれず、見納めというわけではないけれど、今のうちぶらぶらしておこうという魂胆から、バイクに乗って出かけることにした。稲穂が揺れる田んぼや、梨や林檎の実る果樹園の脇を走り抜けて向かった場所が……
福島県福島市の土湯温泉に近い、山奥にある古民家カフェ、「空cafe」だ。築100年ほどの古民家をリノベーションした、それはそれはオシャンティーなカフェである。来ているお客さんも総じてオシャンティーだ。駐車場に停めてある車も、プジョーやミニクーパーなど、その辺の吉牛とかファミマの駐車場では見ない車種だった。
外観はしっかりとした骨組みの古民家。古色蒼然とした木材の色彩が落ち着いた雰囲気を漂わせる。さっそく中に入ってみると、お客さんがいっぱい。物腰の柔らかそうな上品な奥様ばかりだ。運よく窓際の眺めのいい席が空いている。しかし、バイク用のジャケットを着たまんま、ずかずか入っていくと、明らかに異質な存在が闖入したような、妙な空気が一瞬流れたので、にこやかな笑みを絶やさないようにしつつ、席にちんまりと収まった。
当日はお客さんが多かった為、室内の撮影は遠慮した。以前、空いていた時に撮った写真を貼っておく。まさに「土間」といった感じの、土を踏み固めた頑丈な床の上にテーブルが並んでいる。また、味のある古い棚に手作りの小物やジャムの瓶が並んでいて、これらは購入することができる。カウンター席の向こうは視界が開けており、そこから自然光が入り込んで、なんとも居心地の良い落ち着いた雰囲気が感じられる。
カフェらしく、コーヒーや紅茶、ケーキのメニューが豊富だが、ここでよく頼むのがピザだ。クリスピータイプのピザで、サクサクした食感が楽しめる。今回はピザのLサイズ(900円）とブレンドコーヒー(600円）を頼むことにした。ここのコーヒーはカップではなく、茶道で使うような茶碗に注がれて提供される。ずずっ、と、抹茶でも啜るように頂く。ピザも塩味がちょうど良くて、おいしゅうございました。
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帰り際、近くにある照南湖という小さな湖に寄る。夏から初秋にかけて、ここは蓮の花の名所になる。
蓮の花もほとんど終わりかけていたけれど、ちらほらと咲いているのも残っていた。私の他にも人がいたけど、なんだかすごい、バズーカ砲みたいな望遠レンズを取り付けたカメラマンだらけだった。しかも、私がここにいた30分くらいの間、じっと硬直したまま全然動かない。妙な威圧感があって、怖くて近づけなかった。あれは人だったのだろうか。
時々、湖面をかすめるようにして風が吹きおろしてくるのだけど、本当にいい風だった。秋の風ってなんだかよく分からないけれど、いい匂いがする。枯れた匂いに、すこし甘い香りが混じっている、何故かとても懐かしい感触の風だった。
先月、大船渡に行ってまた戻ってきてから、どうもやる気を失っていたのだけど、今回走っていたら本当に気分が良くて、やる気が回復した感じだった。バイク乗りにしてみれば、秋というのは「いま乗らなきゃいつ乗るの」というくらい最高の季節。これから寒くなってくると、苦行に近くなってくる。まだ走れるうちに、行けるところまで行こう。とりあえず、近いうちにバイクの点検をしようかと思う。
