口から出まかせ日記【表】

GWで浪費すると母の日にツケが回る。

自動販売機をめぐる散歩。

は散歩を愛しています。でも、「散歩 趣味」なんてネットで検索してみると、そんなに芳しい評判がないですね。散歩自体は趣味と認められず、なんとなく、引退した人とか、ヒマな人がやるものと思われているみたいです。

 

「ウォーキング」とか「ランニング」のために外に出るのはいいけど、ぼんやり何か考えながらのろのろ歩くのは、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と怒られるような行為なんだろうか。まあ、怒られたところでこっちは鼻でもほじくってやり過ごしますけどね。

 

そういえば、戦国時代に日本で布教活動をしたルイス・フロイスという人がいますが、その人の著書、『ヨーロッパ文化と日本文化』に、こんなことが書かれています。

 

われわれは散歩を、大きな保養で健康によく、気晴らしになるものと考えている。日本人は全然散歩をしない。むしろそれを不思議がり、それを仕事のためであり、悔悛のためであると考えている。

 

(第1章 27節より引用)

 

500年近く昔の日本人と感覚がだいぶ違うのは当たり前ですが、行動原理はいまでも息づいているんじゃないでしょうか。つまり、「誰かに説明の付けやすい行動」はとれるけど、そうじゃない行動を避けたりとか、他人がそういう行動をしていれば訝しがるとか。

 

ヨーロッパ文化と日本文化 (岩波文庫)

ヨーロッパ文化と日本文化 (岩波文庫)

 

 

これぐらいにしといて本題に入ると、私が散歩する時に必ずチェックするのが自動販売です。自動販売機があったら、必ず立ち止まります。どこをチェックするのかというと、まあ、色々です。価格とか、並んでいる飲み物とか。一応、釣銭が入ってないか確かめたりもしますけど(笑)。

 

新しい自動販売機(以下、自販機)ができたら、必ず見に行きます。最近は近所に単身者用のアパートが建つことが多いんですが、その前には必ず自販機が一台か二台はある。見に行ったところで買いはしません。いつも水筒に飲み物を入れて出歩いています。あろうことか自販機の前で自前の飲み物をぐびぐび飲んだりしている。

 

自販機を眺めながら、なにか深い思考に浸れるのかといえば、全然そんなことないです。別に自販機を眺めたところでなにかが得られるわけでもない。そんなものが得たいんだったら家で本でも読んでいた方がなんぼかいいですよ。

 

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並んでいる飲み物を眺めながら、「あ~」と呟いたり。「地域限定」なんて書かれてる缶コーヒーを眺めて、「なるほどね~」といったり。もうすっかり寒くなったのに「熱中症対策」なんて貼られているのを見て、諸行無常を感じたり。他人からすれば、いつまでも買うものが決まらない人に見られるでしょう。

 

自販機にいったい何を見ているかというと、もしかしたら、自然の風景に近いかもしれません。水の流れとか、木の葉が風で揺れているとか。「いや、自販機にそれを感じるのはおかしいでしょう」と感じるかもしれませんが、私もぜんぜんおかしいと思いますよ(笑)。

 

ただ、いつも売れ筋の商品があり、同時に期間限定の商品がある。入れ替えのないものと、入れ替えの激しいものが混在し、あるものは消えて、あるものは存在し続ける。そういった「原理」というのが、自販機の小さな世界でも容赦なく展開されている。その厳しさに注目しつつ、飲み物の容器のデザインだとか、貼り付いている色んな宣伝広告を楽しんでいるのかなと思います。

 

「紅葉」を眺めるのに近いかもしれませんね。紅葉はとってもきれいですけど、それは冬の到来を告げる光景でもあり、厳しさを背景に秘めている。風景には確実な「原理」が働いています。それを感じつつも、紅葉の美しさを楽しむことができるのは、人間だから出来ることですよね。

 

私は自動販売機を眺めて、自分が人間であることを再確認しているんでしょうか。いや、ぜったいそんな高尚なことは考えてない。「やっす!」「たっか!」「これのんだことねぇ」「マズそ」「これうまいよね~」「はじめてみたんですけどこれ」「こいつハゲとるやんけ」などと自販機の前で呟いている人間が、高尚なことなんて考えられるわけがないんだ。