口から出まかせ日記【表】

大掃除してねんだわ

バイトと白昼夢。

 

では重苦しい熱風が渦を巻き、蝉が地面をのたうちまわっている。そんな地獄のさなか、ナポリの窯の白い三輪スクーターが道路を走ってるのを見かけて感動しました。デリバリーに勤しむ彼だけじゃない。この夏空の下、今も多くの人がアルバイトをしているのだ。そう考えると心が熱くなり、いてもたってもいられず、すぐに家に帰って冷酒でキュッと一杯やるなどしました。感情と行動がまったく一致していない。


それはいいとして、今週のブログのお題は「やったことがあるアルバイト」ですか。学生時代に色々バイトはやってきましたが、記憶がだいぶぼやけてきてますね。その中でいまだに印象深いのが「看板持ち」のバイト。住宅展示場までの案内が書かれた看板を持ったスーツの人が、歩道に立ってるのを見かけたりしませんか。あれは住宅メーカーの社員とかじゃなく、たいていバイトです。


私もそんな感じで、背丈よりちょっと大き目の看板を支えつつ、ネギ畑のすぐ脇とかに立っておりました。近くにパイプ椅子も置いておき、20分立ったら10分座るみたいなサイクルでやってましたが、暑かったり寒かったり風が強かったりするとまあ辛いけど、そうじゃなければ至って平穏で、退屈そのもの。目の前を通りすぎる車や人を、なす術もなく眺めているしかありません。この世から置いてきぼりを喰らったみたいな感じが身にひしひしと沈殿していきましたよ。バイトというより精神的な鍛錬を施している感じがあった。

 


もうひとつ印象的だったのが、プールの監視員のバイト。2メートルちょいぐらいある監視台に座り、飛び込んだりする子供がいたらホイッスルを鳴らしたり、やることは色々ありましたが、まるで何もすることがない、不可思議なほど平穏な時間が現れることもあり、そんな時は眼下に映るプールの光景が、夢か現かまるで分からなくなったりして。これがですねぇ、退屈どころか気分が妙にハイになり、頭上の夏空に溶け込んでいくような、どこまでいくのかわからないスリリングな感じすらあった。正直いままで生きてきて、プールの監視員をやってたときが一番幸せだったんじゃないかとすら思いますよ笑。


この「トリップ」は同僚にも感じる人がいて、「幸せな幽霊になってる感じがする」とか妙なことを言ってましたが、まあ確かに、自分はここにいるのだけど、どこにもいない、みたいな感覚ではありましたね。これは看板持ちのバイトでも言えることですが、微妙に日常とズレた感じで自分の身を晒すことで、他人から見ればそれなりに目立つわけです。でも、「なぜそうしてるのか」は一目瞭然なので、認められつつも徹底的に放置される。この感じが、どこか現実離れした感覚を呼び起こしやすいのか。


他にもバイトの思い出はあります。でもなんかもう形が崩れてきて曖昧になってきており、早くも走馬灯のようですわ笑。そのうちバイトの記憶がぜんぶ癒着して、なんのバイトか忘れたけれど、とにかくバイトをしたことは覚えている。そんな白昼夢に成り果てるかもしれません。

 

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